エンジニアリングプラスチックにおけるPFASの規制
欧州化学品庁(ECHA)は最近、REACH規制の附属書XVIIの対象にペルフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)を新たに加える提案書を公表しました。この提案書は、PFASの定義を拡大して1万種以上の化学物質を対象とするもので、PTFEやPVDFなどのフッ素化合物も含まれます。
フッ素化合物は多くの業界で広く使用されており、これらの物質の制限は多くの企業に影響を与えます。三菱ケミカルグループのアドバンスドマテリアルズ本部では、この提案書の進捗状況と、弊社のグローバルなお客様、生産プロセス、フッ素化合物を含む材料ポートフォリオにおける意義を注視しています。
このページは、新しいPFAS規制の範囲が確定するまで、現在PTFEまたはPVDFを含む熱可塑性エンジニアリングプラスチックを使用しているお客様が、これらの材料を置き換える場合に備えるための一助となることを目的としています。
以下に、ECHAの提案書について弊社が知り得た情報、影響を受ける可能性のある材料、およびPFAS材料の代替品を見つける際に三菱ケミカルグループがお客様をどのようにサポートできるかについての情報を示します。
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PFASとはper- and fluoroalkyl substances(ペルフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル化合物)の略で、完全にフッ素化されたメチル(CF3-)またはメチレン(-CF2-)炭素原子(H/Cl/Br/I)を少なくとも1つ含むフッ素化合物の総称です。
PFAS化学物質中の炭素とフッ素の化学結合が非常に強いため、これらの物質は極めて高い劣化耐性を有しています。その難分解性という特性に水溶性が組み合わされたPFASは封じ込めや処分が困難になるため、世界中の土壌や地表、地下水、飲料水で高濃度のPFASが検出されています。PFASが「永遠の化学物質」とも呼ばれているのは、蓄積されたPFASを環境から除去する効率的で費用対効果の高い方法が現在存在しないためです。この分類のすべての化学物質に当てはまるわけではありませんが、一部のPFASは環境だけでなく人間の健康にも有害であることが示されています。
2023年2月7日付けのECHA提案書は、PFAS化学物質による汚染を抑制し、環境へのさらなる蓄積を防止するため、PFAS化学物質の製造と使用を制限することを目的としています。まもなく規制の対象となる1万種以上の化学物質をすべて記載したリストは、ECHAのウェブサイトに掲載されています。
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PFAS化学物質が有する独自の材料特性は、消費者製品とエンジニアリングの両方で広く使用されており、これによって実現している重要な用途は技術の進歩を促進しています。
PTFEやPVDFなどのフッ素化合物は、化学的腐食や高温に対する耐性が高く、反応性の高い化学薬品や温度を含む非常に要件の厳しいエンジニアリング用途に適しています。特にPTFEは摩擦係数が非常に低いことから広く使用されており、ベアリングや摩耗用途において非常に優れた材料となっています。
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三菱ケミカルグループのアドバンスドマテリアルズ本部が製造するエンジニアリングプラスチック成形材料には、PTFEやPVDFを基材として使用しているものや、PTFEやPVDFを添加剤として含有しているものがあります。現在のECHA提案書に基づいて、次の成形材料に影響があると予想されます。
- Acetron® AF Blend / Ertacetal® H-TF POM-H
- Duratron® PAI素材
- Fluorosint® PTFE素材
- Duratron® DF PI、Duratron® DFU PI、およびDuratron® TX PI
- Ketron® TX PEEK、Ketron® HPV PEEK、およびKetron® Sterra™ HPV PEEK
- Semitron® ESD 500HR PTFE
- Semitron® ESD HPV PEEK
- Ertalyte® TX PET
- Techtron® HPV PPS
現時点では、上記が影響を受ける製品のすべてかどうかを明確に示すことはできません。弊社は、このリストを最新の状態に保つために、提案書の進展を引き続き注視します。
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フッ素樹脂は独自の特性プロファイルを持つため、あらゆる用途においてPFASフリーの組成を持つ単一のポリマーで代替できるものはありません。PTFEまたはPVDF含有材料の置換を検討している場合は、お客様の用途の熱、化学、および機械的要件の詳細な分析から始めることをお勧めします。さらに、一部分の材料を置換すると、設計の変更も必要になる場合が多いことに注意してください。
三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ本部は、市場で最も幅広いエンジニアリングプラスチック素材を提供しているため、フッ素化合物からの移行を支援する独自の立場にあります。PFASフリーの組成を持ち、幅広い性能プロファイルを持つ数百種類の材料のポートフォリオに加えて、弊社のテクニカルサービス部門は、材料選定、設計上の考慮事項、および処理オプションについてお客様をサポートします。
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PFAS物質を規制するECHA提案書の詳細については、ECHAウェブサイトのQ&Aセクションを参照してください。
PTFEやPVDFのような材料は工業製品と商業製品の両方で非常に広く使用されているため、フッ素化合物の差し迫った規制は多くの企業に大きな影響を与えるでしょう。三菱ケミカルグループは、お客様がこの移行を乗り越えるためのサポートをしてまいります。
- PFAS含有製品に関する透明性の提供
- 製品の組成にPFASが含まれているかどうかを迅速に評価するためのツールとドキュメントの導入
- PFASに関するECHAおよびREACH規制の進展の監視
- 組成にPFASを含まない適切な材料を見つけるための材料選定に関するコンサルティング
- 同等の性能プロファイルを持つ代替材料の開発
人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていくこと
弊社の原動力である理念としてのKAITEKIについてご紹介します。
MatFind
お客様の用途に最適なエンジニアリングプラスチックを素早く探せます。必要な性能特性を入力すると、MatFindが材料の絞り込みと比較をお手伝いします。現在、このツールは英語のみでのご提供です。
市場で最も幅広い熱可塑性プラスチック素材のポートフォリオ
お客様の用途で必要とされる性能がどのようなものであっても、弊社の素材製品およびカスタム熱可塑性樹脂製品の中から必要な材料を見つけることができます。